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かどまの民話「孝子井戸」

昔、茨田(まった)郡門真一番上村、今の垣内町に、おるいさんと村一番の孝行息子の徳一が住んでいた。
母のおるいさんは夜遅くまで反物を織り、徳一は田畑を耕して貧しいながらも親子仲睦まじく暮らしていた。ただ一つ心配は、徳一が一向に結婚しようとしない事くらいであった。
おるいさんは、美しい反物の織り方を習おうと毎晩多くの娘たちが通ってくる中で、目のきれいなひときわ可愛い娘を見つけ、嫁さん候補として心密かに面倒を見ていたが、息子は全くその気にならない。
そうした折、日照り続きで農作物が育たなくなった。徳一は井戸水をくんで田畑へ撒いていたが全く足りず、しまいには天秤棒に桶をかけて遠い古川まで水汲みに出かけたりした。しかし昼間は暑すぎるので夜の間に月明かりで何度も古川を往復するのだった。
こんな生活が続いたため気苦労で母のおるいは病気になるし、お粥を炊こうにも枯れた井戸に水のあるはずもない。

井戸のイラスト

ある日のこと、最後の頼みになるかもと、母が徳一を呼び
「わては清滝という所で生まれたんや。家には室池の白龍という竜神が掘ったという井戸がある。この水は湧き出して枯れたことがないらしい。その水を汲んで村の井戸に注いだら水が湧き出すかもしれん。そしてどうかわてが死ぬ前にあの冷たくておいしい水を飲ませておくれ。」と頼んだ。
それを聞くと徳一は近所の人に母のことを頼み、
「俺が帰るまで待っててくれよ。」 
といいおいて、夕方出発し急ぎに急いだが、清滝に着いたのは夜中だった。
素早く水を汲んで母の元へと急ぎとって返したが、朝方やっと家に戻ってみると、母は既に亡くなっていた。
徳一は茫然となったが、母の望み通り唇に水を含ませてやり、村の井戸に清滝の水を注ぎ始めた。村人の中には縁起が悪いと嫌がるものもいたが耳も貸さずに母の言いつけ通り次々と注いだ。

翌朝、井戸端へいってびっくり。井戸にコンコンと水が湧き出ていた。
この水のおかげで村人や田畑は以前の様に甦り、徳一もやがて美しい嫁を貰い幸せに暮らしたそうな。
しかし、この水のことを疑い嫌がった人々の井戸には、水はいつになっても湧いては来なかった。
後に徳一の井戸は、孝子井戸と呼ばれたそうな。

出典

門真市PTA協議会 母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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