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かどまの民話「衣掛柳」

昔、今の北島町の周辺は素晴らしい景観に恵まれていた。古川の両岸にはたくさんの柳の木が並んでいて、その小枝が川の上に垂れ下がり、その合間から行き交う舟人が船頭歌を歌いながら過ぎ去るのが見えた。また夏には赤・白たくさんの蓮の花が咲き、秋には稲穂が豊作を告げる。

この北島村に友右衛門という独身の青年と、シロという犬が暮らしていた。
ある日、この飼い犬のシロが表でワンワンと吠えるので、友右衛門が玄関にでて見ると、シロが何かをくわえている。それは、美しい色とりどりの衣で、透き通ってまるで孔雀の羽のようであった。手にとってみるとそれは軽く、キラキラと光を放ち、高貴な香りを漂わせていた。まことに此の世のものと思えぬほど素晴らしい衣であった。
友右衛門はその衣を畳みながら、
「シロ、おまえはこのようなものをどこからくわえてきたんや?」
とつぶやいた。するとシロはワンワンと吠えながら表へ走り出た。友右衛門がその後についていき古川の入江まできたとき、
「あっ!」と驚いた。
そこには、先ほどの孔雀の羽のような衣をまとった天女達が、黄金色した蝶のようにひらひらと衣を翻して青空に舞い、その眩いばかりの美しさを競っていた。
あまりの美しさにうっとりとしていると、突然シロが吠えて走り出した。なにごとかと後について行って見ると、入江の向こうの池に出た。そこには赤や白の蓮の花が咲き、風もないのに蓮の葉が揺れている。そーっとのぞいて見ると、何とそこには白い膚の背を向け、頭に宝冠をつけた天女がいた。

天女のイラスト

友右衛門が
「そこにおいでになるのはどなたですか?」
と声を掛けると、天女は身体を水中に付けたままくるりと振り向き水面から首だけ出して友右衛門を見詰めた。そして目から大粒の涙を流して、
「私達がここで水浴びをしてましたら、その犬が柳に掛けておいた私の羽衣をもっていってしまったのです。羽衣がなければ私は天上界に帰る事ができません。他の天女達は私がいくのをあそこで待っているのです。」
と言うのだった。
指差すほうを見ると、先ほどの天女たちがこのまま天上界に帰ることもできず楠の枝にとまって寂しそうにこちらを見ているのだった。
かわいそうに思った友右衛門は、
「あなたの羽衣は私の家に大切にしまってあります。」
と言って天女を家につれて帰った。
「せめて今宵は私のところに泊まっていってください。帰るのは明日でもよいではありませんか」
と引きとめようとしたが、天女は早く天上界へ帰らねばと、差し出す食事も口にせぬまま、ただただ泣くばかりだった。かわいそうになった友右衛門は奥の部屋にいき大事にしまっておいた羽衣を出してきて天女に差し出した。
すると急に部屋中がパーッと明るくなって、羽衣をまとった天女が庭に出ようとした。その時、シロが天女を引きとめようと羽衣の裾をくわえると、裾が引きちぎれてしまった。友右衛門はその裾をシロから取り上げ天女に渡そうとすると、
「私を救ってくださったお礼にそれを差し上げます。必ず良いことがありますよ。」
と言って天女はふわりと空へ消えていった。

それから友右衛門はどこからむかえたか、あの時の天女と瓜二つの美しい花嫁をもらい幸せに暮らしたそうな。

出典

門真市PTA協議会 母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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