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かどまの民話「代官屋敷の黒さん狸」

たぬきのイラスト

むかし、横地村、今の常盤町に代官所があった。ここの代官は橋川代官と言って、現在の大池の新田を開拓するなどして村人の暮らしが少しでも楽になるよう努められた。いつも穏やかで明るく、頭のよい代官は村人から親のように親しまれた。

代官所の周辺の倉は米や味噌、炭などがたくさん納められていた。その炭倉の一角に黒さん狸という古狸が住んでおった。屋敷神のお供え物から泉水の鯉まで食べる悪い狸であった。さすがの人のよい代官もこれには困り炭倉の前に残飯などを置いてやることにした。すると今度はいつでも豊富な食べ物にあり付けるので、腹が満腹になると外に出かける人を化かしたりして、いたずらをして喜ぶようになった。

ある日のこと旦那様が結婚式の帰りに、沢山の土産物を持ち、ほろよい機嫌で通りかかったときのことである。美女に化けた黒さん狸が、
「旦那様、お帰りなさいませ。すぐにお風呂に入りなさいな。私が背中をお流しします。」
と言い、旦那様はだまされたとも知らず、なんと野壷に連れていかれたんや。
「さあ、いいお湯加減でございます。早くお入りください。」
そう言われるといい気持ちの旦那様は持っていた土産物を美女に渡し、紋付姿のままドボンと風呂につかるのだった。肥溜の壷に肩までどっぷり浸かって顔まで洗おうとした。その時やっと目が覚め、我にかえった旦那様は、臭くて臭くてたまらず、恥ずかしいやら情けないやらで一目散に走り帰ったそうや。

またあるときは、村中を巡回している代官に変装した黒さん狸が本物の代官とばったり出合ってしまったこともある。村人は、
「これは一体どうゆうことや。どちらが本当の代官様や。困った、困った。」
とうろたえた。代官ももう我慢ができない。今後、炭倉の食事はもちろん、屋敷神の供え物もいっさい置かないことにした。
食べるものがなく腹を減らした黒さん狸はとうとう村へ出かけて鶏をおそっては食べるようになった。こうなれば代官も捕らえるしかないと覚悟し、黒さん狸がよく出入りする屋敷内に罠を仕掛けた。黒さん狸はいとも簡単にご用となった。捕らえた黒さん狸を代官は罠のまま縁側へ連れていき、
「その方、村人を困らせた罪は重い。処分して毛皮にし、敷物にいたす。おい、刀を持て。」
と大声で家来に命じた。すっかり観念した黒さん狸は両手を合わせ涙を流して言うのだった。
「代官様、どうぞお許しください。これからは決して人様にご迷惑はかけません。人間様に好かれる狸になります。ですから、どうか命だけはお助けください。お願いいたします。」
代官はしばらく考えていたが、黒さん狸の言葉を信用して許してやることにした。
それからは、村人たちもだまされることはなくなり、黒さん狸と子供たちが一緒に遊ぶ姿がみられるようになった。名月の夜には観月の宴がもよおされ、琴の音色に黒さん狸が築山で狸おどりをやって宴会を盛りあげたりもした。
代官は真面目になった黒さん狸を家族同様にかわいがり、代官屋敷の黒さん狸の評判は村中に広まった。

出典

門真市PTA協議会 母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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