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かどまの民話「飼い猫タマの恩返し」

このお話は、秀松という人が、しんせきの出産祝いに生駒の方に行き、帰り道に、おそろしい老婆にあったというお話なんや。

秀松さんは、みやげをもらい河内へと帰り道を急いでいたんや。
ここはな、逢坂(おうさか)の清(きよ)滝(たき)峠(とうげ)を下れば河内へと行けるはずの道でな、その途中の山道へさしかかったとき、急に霧が出てきてな、見る見るうちに一寸先も見えんようになってしもたんや。足元に気を付けながら歩いていたが、道に迷ったらしく清滝峠になかなか着かない。

霧の晴れるのを待ってまた歩き続けたが、こんどは雨が降ってきた。雨宿りをしようとふと前の方を見るとお堂があり、そのお堂の中にお地蔵さんが笠をかぶって立っていた。秀松さんは、手を合わせぺこりと頭をさげ、その笠をかぶり外に出た。道を聞くにも通る人もなく家もないような様子でな、それでも歩き続けておったらやっと一軒の家の明かりが見えてな、道を聞くため「トントン、トントン」と表戸を叩いてみたんや。

猫のイラストそしたら中から髪の乱れた見るからに異様な老婆があらわれた。帰り道をたずねると、 「ここは生駒山中やから河内へは遠い。今日はわての家に泊まりなはれ。」 と言った。
「何とおそろしいところへきたもんだ。」 と思ったが、今となってはもう後(あと)の祭りやった。しばらくすると表のほうに声がして、この家の娘さんと思われる女性が現れて、老婆が秀松に娘を紹介した。娘は秀松をみるなり、なつかしそうにあいさつをして風呂へ入るよう案内してくれた。
そして老婆はというと娘に 「お客様に失礼のないようにたのむで。」 と言って出かけていった。

「ああ、おなつかしいご主人様。私は昔あなたさまに飼われていた猫のタマでございます。私が死んだとき、ありがたいお経を読んでいただいたおかげで、こうして人間として生き返ることができました。今こそご恩返しをしとうございます。あの老婆は妖怪でございます。今、谷にカマをとぎにいっております。早く逃げてください。あなたさまは食べられてしまいます。」

娘の目には、涙があふれていた。秀松は心から娘に礼を言い教えてもらった道を急いで歩き始めた。
しばらくすると 「まてー!」 と老婆がおいかけてくる声が聞こえてきた。秀松は何とか助かりたいと、必死で走り続けた。どのくらい走ったか、途中で伊勢参りの帰りの一行と出会ったので、とうとう老婆もあきらめたらしい。

無事に家へ帰った秀松さんは、タマの墓に手を合わせ深く感謝したそうな。

出典

門真市PTA協議会 母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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