かどまの民話「チュー太郎ねずみの恩返し」

更新日:2019年10月31日

むかし、今の宮前町の奈良街道によったところに、惣吉というみよりのない若者が一人で畑をたがやしながらくらしておった。
秋のとり入れもすぎ、庭にもみをほしていたところ、そこへ飼いねこのタマが小さなねずみをくわえて来よった。ねずみは、はつかねずみほどの子ねずみで、かわいそうに耳はつめでもぎ取られて身動きもできず、苦しそうにしておった。それを見た心のやさしい惣吉は
「これタマ、かわいそうやないか。はなしておやり。」とねずみを取り上げて、傷の手あてをし、わらくずをしいて寝させ、「はよう、ようなれよ。」と弱っているねずみに水をあたえ、おもゆを食べさせ、いっしょうけんめいかんびょうしてやった。

ネズミのイラスト

すると日に日に元気を取りもどし、チューチューとなきながら走りまわるまで回復してきた。さむい夜には惣吉のふとんの中へもぐりこんできて、朝までそい寝することもあった。そんなかわいい子ねずみをチュー太郎と名づけ、タマといっしょに飼うことにした。このチュー太郎が惣吉のかたの上にとびうつったり足にじゃれつくと、うれしそうに目をほそめ、「ようこんなに元気になったもんや。」と一人つぶやいた。

ある夜のこと、寝ている惣吉の手や足をひっかくチュー太郎にたまりかねて目をさますと、モウモウとけむりが立ちこめていた。びっくりして外に目をやると、近所のなやがまっかになってもえていた。惣吉は大声で「火事や、火事や。」とさけんで助けをもとめ、なやだけでくいとめることができた。

そういうことがあった矢先のことやった。いく日も雨がふりつづき、川の水が今にもあふれんばかりになった。そんなある日、外へ出ようとしたところ、街道筋でザーザー音がするのでよく見ると、数千匹のねずみの集団があわただしく東の方へにげ去るのが見えた。その中にチュー太郎もいた。惣吉をみつけたチュー太郎は集団をはなれ、惣吉のところへやってきて、惣吉のはいているぞうりをかじりはじめた。
「これは何かおこる前ぶれにちがいない。」と惣吉は思い、村人をあつめそうだんしていたとき、大阪平野の方を見ると、なんと淀川のていぼうがこわれ、こう水が村へおしよせてくるところやった。「こらたいへんや。えらいこっちゃ。」と惣吉はせんとうに立ち、村人たちをつれチュー太郎のあとについて、中野村の山道までにげていき、ぶじ難をのがれた。
この話はとなり村までつたわり、その後惣吉はかわいいおよめさんをもらい、チュー太郎とともにしあわせになったということや。

出典

門真市PTA協議会母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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