かどまの民話「重(おも)軽石(かるいし)」

更新日:2019年10月31日

むかし、 薭島村(ひえじまむら)には山王宮(現在の堤根(つつみね)神社(じんじゃ)があった。その大樹の根元に五輪塔があって、その風輪、火輪の二石だけで、空輪と下部に当る地輪・水輪の三石はいつの間にかなくなっていた。この石はいつ頃からあったのか不明だが、村人たちはいつともなく占い石と呼び習わすようになった。

薭島村に農業を営む嘉右衛門という青年が父親の嘉兵衛さんとその妻のおりとさんと三人で暮らしていた。 父親の嘉兵衛さんは病身で手足の自由が利(き)かず毎日寝ていることが多かった。母のおりとさんと嘉右衛門さんは、せっせと父親の分まで働いていた。農繁期にもなると猫の手でも借りたいくらい忙しくなり、早朝から出かけ夕方遅くくたくたに疲れて帰ってくる日が続いていた。

そんなある日のこと一人の親せきのものが 「一度、能勢(のせ)の妙見(みょうけん)さんにお父さんを連れていきなはれ。あそこにいけば、みんな幸運に恵まれ、病気もたちどころに治してくださるんや。」 と言ってくれた。
治るものなら何としてもという思いはあるものの、手足が不自由で遠くへは連れて行けず、山王さんの古くからの信者でもあり、かたくなに今まで通りの山王さん信仰を続けるしかないのであった。

病床の父もすまなく思い、 「いくら信心しても私の病気はもう治らないんだよ。」 と言う。
「そんなことがあるもんですか。真面目にお祈りすれば必ず聞いてくれはるんや。」 と、嘉右衛門さんとおりとさんは一所懸命にお祈りするのだった。

杖をもった白髪の老人のイラスト

ある夜のこと嘉兵衛さんは夢を見た。
その夢というのは、長い杖を持った白髪の老人が枕元に現れ、 「山王宮の大木の下に占い石がある。これを持ち上げられるかどうか試してみなされ。」 と告げると、すーっと消えてしまったというものだった。

翌朝父は妻と嘉右衛門さんに夢の中のお告げの話を聞かせて 「済まないが嘉右衛門よ、お母さんと一緒に山王宮の大木の下を調べてくれないか。」 と頼むのだった。

山王宮から帰った嘉右衛門さんは
「お父さん、こんな石があったけれど、これが老人の言った石なんやろうか?」 と言って持ち帰ってきた石を見せた。
「どれどれ」と持ち上げようとしてみたが病身の嘉兵衛さんには重くて持ち上げられない。
「これは不思議な石じゃな。嘉右衛門があれほど軽そうに持って帰って来たのに、この私にはびくとも動かない。」 そこでこの石はただの石ではないぞと思いその石に祈願することにした。

ちょうど三日目のことやった。嘉兵衛さんは気分も楽になり、石占いをしようとその石をそっと持ち上げてみると何と軽々と上がるではないか。

「おーい、上がったぞ!持てたぞ!」 と父を囲み、みんなで喜びあった。 その翌日からは嘘のように、手足も動くようになり、病はどこかへ飛(と)んでいってしまったようだった。

元気な姿に戻った父親と共に親子三人は畑仕事に精を出すようになったそうや。

出典

門真市PTA協議会母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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