かどまの民話「飼い猫タマの恩返し」

更新日:2019年10月31日

このお話は、秀松という人が、しんせきの出産祝いに生駒の方に行き、帰り道に、おそろしい老婆にあったというお話なんや。

秀松さんは、みやげをもらい河内へと帰り道を急いでいたんや。
ここはな、逢坂(おうさか)の清滝(きよたき)峠(とうげ)を下れば河内へと行けるはずの道でな、その途中の山道へさしかかったとき、急に霧が出てきてな、見る見るうちに一寸先も見えんようになってしもたんや。足元に気を付けながら歩いていたが、道に迷ったらしく清滝峠になかなか着かない。

霧の晴れるのを待ってまた歩き続けたが、こんどは雨が降ってきた。雨宿りをしようとふと前の方を見るとお堂があり、そのお堂の中にお地蔵さんが笠をかぶって立っていた。秀松さんは、手を合わせぺこりと頭をさげ、その笠をかぶり外に出た。道を聞くにも通る人もなく家もないような様子でな、それでも歩き続けておったらやっと一軒の家の明かりが見えてな、道を聞くため「トントン、トントン」と表戸を叩いてみたんや。

猫のイラスト

そしたら中から髪の乱れた見るからに異様な老婆があらわれた。帰り道をたずねると、 「ここは生駒山中やから河内へは遠い。今日はわての家に泊まりなはれ。」 と言った。
「何とおそろしいところへきたもんだ。」 と思ったが、今となってはもう後(あと)の祭りやった。しばらくすると表のほうに声がして、この家の娘さんと思われる女性が現れて、老婆が秀松に娘を紹介した。娘は秀松をみるなり、なつかしそうにあいさつをして風呂へ入るよう案内してくれた。
そして老婆はというと娘に 「お客様に失礼のないようにたのむで。」 と言って出かけていった。

 「ああ、おなつかしいご主人様。私は昔あなたさまに飼われていた猫のタマでございます。私が死んだとき、ありがたいお経を読んでいただいたおかげで、こうして人間として生き返ることができました。今こそご恩返しをしとうございます。あの老婆は妖怪でございます。今、谷にカマをとぎにいっております。早く逃げてください。あなたさまは食べられてしまいます。」

娘の目には、涙があふれていた。秀松は心から娘に礼を言い教えてもらった道を急いで歩き始めた。
しばらくすると 「まてー!」 と老婆がおいかけてくる声が聞こえてきた。秀松は何とか助かりたいと、必死で走り続けた。どのくらい走ったか、途中で伊勢参りの帰りの一行と出会ったので、とうとう老婆もあきらめたらしい。

無事に家へ帰った秀松さんは、タマの墓に手を合わせ深く感謝したそうな。

出典

門真市PTA協議会母親代表委員会(平成14年度)『かどまの民話』

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