アーティストインタビュー emi tanaji

更新日:2025年11月13日

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新たな文化・学習活動の拠点として完成が期待される「門真市立文化創造図書館KADOMADO」。その建設現場を囲む仮囲いに、色鮮やかなウォールアートが誕生しました。制作を手掛けたのは、門真出身のアーティストemi tanajiさん。制作期間中には、市内の子どもたちもワークショップに参加し、まちに新たな彩りを添えています。地元ゆかりのアーティストであるemi tanajiさんに、制作に至った経緯や作品に込めた想いを伺いました。

―壁画を描き始めたきっかけを教えてください。

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emi tanajiさん

20代前半までは、東京で舞台や歌の仕事をしていたのですが、20代中盤にひょんなきっかけで杉並区の壁画を描くことになって。もともと大学では油絵を専攻していて、大きなサイズの絵を描くのは好きだったので、喜んでお受けしました。その仕事をしているときに、話しかけてくださったおばさまに、「今度パン屋をオープンするから壁画を描いて欲しい!」と頼まれ、それで次の仕事が決まり、その壁画をフェイスブックに載せたことがきっかけで、徐々にお仕事をいただくようになりました。

―今回、このKADOMADOの工事仮囲いにウォールアートを制作するに至った経緯を教えてください。

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KADOMA ART FESというフェスがあることは存じ上げていて、地元の大阪、そして門真に携わるアートの仕事がしたいなと思っていたのでKADOMA ART FESの主催の方にご連絡させていただいて。

たまたま私、ここが母校(門真市立第一中学校)だったんですけど、母校の一中跡地に工事の仮囲いをしている場所があるよということだったので、「ぜひここの仮囲いに描かせてください!」とお願いしました。

それと同時期に、私の祖母がもう余命いくばくかみたいな感じになっており、祖母のお願いが「私との時間が欲しい」ということだったので、おばあちゃんとの最後の時間を少しでもたくさん取りたくて。大きい壁でウォールアートをさせていただけたら、その分長くこっちに居られるので「とことん大きい壁ください!」とお願いし、ここに壁画を描くことになりました。残念ながら祖母の最後には間に合いませんでしたが、作業期間中に一中の同級生に声をかけたら、23年ぶりにみんな集まってくれたり、たくさんの子どもたちと一緒にワークショップを開催することができたりして、本当にに最高の作品になりました。

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―この壁画を描く際に、一番大切にしたテーマやメッセージは何ですか?

ここは門真市立第一中学校があった跡地で、「中学校があった場所」に図書館が建つんですけど、ここに中学校があったということは、きっとこの先忘れ去られてしまって、私たち卒業生の記憶の中にしか存在しなくなって。 でもそれも私たちが死んでしまったら、きっとここはいずれは「図書館があった場所」になるんですよね。そうやって移り変わっていくものの儚さや美しさを描きたいなと思いました。一中がなくなってしまって、語り継ぐ人もいなくなってしまったとしても、私たちがここに存在していた青春の時代だったり、あの景色は消えることがないので、そんな思いをアートで表現できないだろうかと考えました。

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作品の中にもいくつかのメッセージを込めました。 まず、ツバメが描かれているんですけど、このツバメには門出の意味があって、学校といえば入学式や卒業式はつきものですが、その入学式や卒業式、春の時期に飛ぶ鳥を門出の意味で書かせていただきました。

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毎年生え変わる角と、その角に象徴される生命の循環や蘇生、そして神の使いとしての意味を持つ、「鹿」。

また、鹿には祈り(再生)の意味がありまして、消えていくものももちろんあるんですが、どんどん新しいものを作っていかないと街は死んでしまうので、人が移り変わり、時代に合っていきながら発展していくという気持ちをこの鹿で表現しています。あと、お花をちらほら描いているんですが、これはガーベラの花で、「希望」という花言葉があるんですね。移り変わっていくものに対して、未来を見据えてどんどん進化していくことへの希望。この街がどんどん都市開発をしていって景色は変わってしまっても、過去の歴史も大事にしながら発展していってほしいという希望を込めました。

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真ん中の丸いところは「元気玉」みたいな意味を持っていて、門真の小学生を対象にしたワークショップに参加してくれた子どもたちやその親御さん、あとはこのプロジェクトを支援していただいている門真市の方々やKADOMADOを建設されている大林組さん、KADOMA ART FES実行委員会の方々の思いをここに一筆入魂していただいて、さらには一中卒業生のみんなも描きに来てくれて、その気持ちがずっとKADOMADOの中に残っていくといいなという気持ちを込めた作品になっています。

―作業中に地域の方と交流したエピソードがあればお聞かせください。

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作業中に通りかかる皆さんや、喋りかけてくださる方に「壁画の一部が今後図書館に飾られるので、もしよかったら一筆描いてもらえませんか?」とお願いして描いてもらっているんです。それで、この間あるご家族が「写真を撮りたい」と言って来てくださったんですけど、お母さんが赤ちゃんを抱かれていて、その赤ちゃんが生後1ヶ月だったんですよ。話を聞くと、赤ちゃんにとって人生で初めてのお散歩だったみたいで「今日初めて外の世界に連れて来たんです」とおっしゃったので、そんな素敵な日ある?と思い、もしよかったら手形か足形か付けていきませんか?と言ったら「是非!」とおっしゃっていただいて。

ここに新しい命の門出を一つ残していただいたんです。これ、私のイチオシです!

―この壁画の一部が、来年5月に開館する「文化創造図書館KADOMADO」の館内に設置されることが決まっておりますが、この作品が施設にとってどのような存在であってほしいと感じますか?

希望であり、祈りであり、歴史であり。

歌で言うとカントリーロードみたいな。この絵を見ると、なんでツバメなんだろう?この丸はなんでいろんな形の丸があってそれぞれ筆跡が違っているんだろう?と「感じ、考え、見入る」作品になってほしいですし、この作品は今後きっと景色として馴染んでいくとは思うんですけど、ふとした時に人の心を救ってくれるような、そんな作品になってくれたらいいなと思います。

―今回の壁画は、ご自身の作品の中でどんな位置づけになりますか?

今までは地元に帰ってくるものかと思って東京で頑張ってきたんですけど、地元に貢献したいという新しい気持ちが芽生えてきたんです。その第一歩の作品だと思っています。

私、おばあちゃんっ子だったんですが、私の一番のファンであった祖母への思いも、さよならのはじまりの意味も込めているので、そういった意味では私の人生にとって一つの分岐点となる作品になったと思います。

―門真市では、令和3(2021)年に「門真市文化芸術推進基本計画」を策定し、「門真をアートであふれるまちに」を合言葉に、文化芸術に関する取組を推進しております。今回もその取組の一つである「KADOMA ART FES」の一環として壁画を制作いただきましたが、今後、門真が文化芸術にあふれるクリエイティブ・シティになっていくためにどうすれば良いか、門真市出身アーティストであるtanajiさんの考えや思いがあればお聞かせください。

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この壁画を描いていている期間、本当にたくさんの人たちが「すごく綺麗ね」「すごいいいわね」って写真を撮りに来てくれたり、喋りかけてくださったんですよ。アートというのは街中にあふれているのに、それをアートだと認識していない人たちがたくさんいる。そんな人たちが少しでも興味を持つところから始めるということはものすごく大事だと思いますね。この作品が、その興味を持つきっかけのひとつになっているんじゃないかなと思うので、このようなパブリックアートであったり、子どもたちとのワークショップであったり、そういう取り組みをどんどん発信していって、しかも皆さんにアピール出来る形で、興味を持っていただけるような形で立ち上げて取り組めば、皆さんの心の中に、本当はあるけど眠っているワクワクする気持ちを呼び起こせると思っているんですよ。美しいものを美しいと感じる力。例えば、雪が降ったら「雪かきしなきゃな、めんどくさいな」と思うのではなく、雪が降ったら「白一面の雪景色綺麗だな」というような、子どもの頃は持っていた生活とは別のワクワクする部分や、皆さんの心の中にある灯火を少しずつ戻していくような作業ができたら、門真はとてもクリエイティブな街になっていくんだと思います。

壁画の公開期間ついて

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完成した壁画は、令和7(2025)年(2025)年12月頃までご覧いただける予定です。

また、壁画の一部は令和8(2026)年5月に開館する「門真市立文化創造図書館KADOMADO」の館内に移設されますので、楽しみにお待ちください!

アーティストについて

emi tanaji

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幼少期より描くことが好きでコミュニケーションツールとして使ってきた。
今もアートを通じた様々な出会いや観てきた景色を活かし、自身の世界観を広げる自由な創作を続けている。
生命力溢れるダイナミックな作風からゆるい線の柔らかいタッチまで幅広い作品を描く。

主に壁画やタイルアートを得意とし全国各地に作品を残す。

町興しやワークショップ、近年ではアパレルブランドとコラボし、著名人へのデザイン提供、陶芸などもリリースしている。

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市民文化部 生涯学習課 社会教育・文化振興グループ
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